創作ボイスドラマ台本(9人用) 『1999』
先生「はーい、じゃあ進路希望書いた人は日付も確認して提出してね~」
ユノ「ねーこのはちゃん、日付って今日の?」
先生「そう。一番上に年から書いといて。あと先生にちゃん付けしない」
さしこ「てかさぁこのはちゃん、これって出す意味あんのー?」
ユノ「あっ確かに!」
先生「どういうこと?」
さしこ「だって今日って1999年の7月31日だよ?」
先生「『世界が終わる』、って?」
ユノ「そーそー。こんなん出しても俺たち明日が来ねえんだし。書くだけ無駄っしょ」
さしこ「ほらほら見てここ、『1999年の7の月に恐怖の大王が来て人類が滅亡する』って書いてある」
先生「あのねえ、『ノストラダムスの大予言』なんて嘘だから。偶然に偶然が重なってほんとっぽく聞こえるけど、そんな簡単に人類は滅びないの。滅びていいのは同担と元カレだけ」
さしこ「とか言ってこのはちゃん、今日めっちゃ大荷物だったじゃん。何持ってきたの」
先生「サイン入りチェキとブロマと写真集、それから雑誌の切り抜き集にブルーレイにぬいぐるみに…」
ユノ「滅びる気満々じゃん!」
さしこ「アイドルオタクも大変だねえ」
アオ「先生、お願いします」
先生「えっ?ああ、アオくんもう書けたんだ。うん、日付もオッケーだね」
アオ「そんな簡単に滅びるわけないだろ」
ユノ「アオは信じてねえんだ」
アオ「当たり前。そもそも今日本は経済が成長してるんだから、それに伴って工場だ車だって公害が発生するのは当然だろ。てか『恐怖の大王が来る』って何だよ。マリオじゃないんだぞ」
ユノ「お前クッパナメんなよ!あいつ結構つえーんだぞ!」
アオ「まあ確かに炎出してくんのはうざいけど」
さしこ「てかアオ詳しいね」
アオ「え?」
さしこ「…あ、まさかビビって調べまくったりしちゃった?」
ユノ「えっアオまじかよ!クールぶって実はめっちゃ信じてたの?!」
アオ「おい…!」
ユノ「いや~別にいいと思うけどね?俺もさしこも、何ならこのはちゃんも信じてるしいーんじゃねーの?全然恥ずかしいことじゃねーし、うん」
アオ「こンのっ…!」
さしこ「素直になろーよアオく~ん」
アオ「うっさいわボケ!誰がお前らと一緒や、こっちはちゃんと進路希望書いとんねんはよ書けや!」
さしこ「出たアオの関西弁」
ユノ「素になると出るよな~、おもしれー」
アオ「いや俺は信じとらんし?!てかさっきサヤも鼻で笑っとったし?!」
サヤ「えっここで急にわたし?」
さしこ「えー、サヤも信じてない系?」
サヤ「だって滅びたら困るし」
ユノ「それは皆そうだな」
サヤ「そもそもどうやって滅びるのかわからなくない?全員が急に苦しみだすって?あり得ないでしょ。地球が爆発するにもそんなエネルギーがあるとは思えないし、滅亡なんてするわけないよ」
さしこ「まともな意見きた」
ユノ「マリオより全然まとも」
アオ「誰がマリオや、俺はデイジー派やっちゅうねん」
さしこ「アオああいうの好みなんだ、ふーん」
サヤ「…とにかく、そんな突然人類が滅びるわけないから。大人しく進路希望書いて課題も早く終わらせなよ」
先生「そうだよ2人とも、世界終わんなかったらまた去年みたいに居残り地獄になっちゃうよ?」
ユノ「げえっ…」
さしこ「あれはもう…いい…」
アオ「そんなにやったん?」
ユノ「身体じゅうの毛穴という毛穴から汁が噴き出た」
サヤ「きたなっ」
先生「あれは汚かったね~」
アオ「えっノンフィクション?!」
さしこ「てかユウといちごはどう?」
ユウ/いちご「えっ?」
さしこ「今日人類滅びると思う?」
ユウ「うーん…俺は結局滅びねーと思う」
ユノ「ユウはそっち派か~」
ユウ「っつっても特に理由はないけど…。なんとなく、終わったらやだな、明日が来たらいいなって感じ」
さしこ「まーそうだよね~。あたしらも終わってほしくはないもん。じゃーいちごは?」
いちご「わ、わたしは……、終わる…と、思う……」
サヤ「へー、なんか意外。いちごってあんまりそういうの興味なさそう」
いちご「そ、そんなことないけど…」
ユノ「なんか理由とかあんの?」
いちご「だって、何だかんだ今までの予言当たってるし、最近環境問題すごいし、災害とかだってほんとにくるかも…。恐怖の大王とかそういうのはよくわかんないけど、このままだったら人類滅亡もほんとの話なのかな、って…」
ユノ「あーそれ俺も!今までのが当たっちゃってるとさ、今回もマジなのかもってなっちゃうんだよな。『終わってほしい』とかじゃなくて、『そうなのかもな』って思っちゃうんだよ」
さしこ「あたしここ一週間ぐらい、『最後何食べよう』ってずっと考えてたもん」
アオ「それ決まったの?」
さしこ「うん。卵かけご飯」
~間~
サヤ「フツーそこって『焼肉』とか『ケーキ』とかじゃないの?」
さしこ「いやさ、そういう特別なもの食べちゃうと『ほんとに死んじゃうんだ』ってなっちゃうじゃん?それだったらいつも通りのもの食べて、『明日もまたこれ食べれますように』って、ちょっとでも願掛け?みたいな感じにしたいなーって思ってさ」
~間~
アオ「…ただのアホやと思っとったけど、さしこにもそういうんあるんや。意外」
さしこ「あとシンプルにお金ない」
アオ「感動返せ」
アヤ「…うっス」
先生「あーっアヤちゃん!大遅刻だよ!」
アヤ「…さーせん、眠くて」
先生「も~~…。とりあえず、やった課題と進路希望の紙あったら出して!」
アヤ「白紙でもいっスか?」
先生「だめに決まってるでしょ」
アオ「逆に何でそれでいいと思えたんだよ」
さしこ「ねー、アヤは今日世界終わると思う?」
アヤ「は?」
さしこ「だってほら、今日って1999年の7月31日じゃん?予言で人類メツボーってあったから」
アヤ「…知らね。課題やんなくてよくなるならアリじゃね」
ユノ「俺世界終わると思って課題とか全然やってないんだけど、もし終わんなかったらその分期限延びたりとかしねえかな」
先生「そんなわけないでしょ。ちゃんとやりなさい」
ユノ「げーっマジかよ~!人類滅亡ボーナス略して滅ボーナス、なしか~」
サヤ「あるわけないでしょそんなボーナス。諦めな」
事務員「こんにちは」
先生「あ、山岡さん。こんにちは」
ユノ「(小声で)…誰?」
サヤ「事務員の山岡さん。たまに来るんだから覚えといてあげなよ」
ユノ「ふーん」
事務員「もうすぐ下校時間なので戸締りの確認に来ました」
先生「あ、もうそんな時間でしたか。すみません、今確認します」
事務員「(生徒たちに)課題はちゃんと出せた?」
さしこ「いやー…ぼちぼち、かな」
事務員「ちゃんと計画的にやらないと後で困るよ」
サヤ「だって」
ユノ「あ~~耳タコ」
事務員「…あれ?その本…」
さしこ「『ノストラダムスの大予言』!知ってる?」
事務員「…ああ、もちろん」
さしこ「今日が人類メツボーの日だから読んでたんだ~。山さんもこれ信じてる?」
事務員「信じるも何も…。ああいや、うん、そうだね…信じてる、かな」
さしこ「だよね~!あ、山さんもこれ読む?貸したげる」
事務員「えっ…いいの?」
さしこ「いいよ~どうせ図書館のだし。また会ったときに返してくれれば」
事務員「…じゃあ少しだけ借りようかな。ありがとう」
ユノ「つーかさ、今からコンビニ行かね?最後だしなんかパーティー的なのやろうぜ」
さしこ「おーいいね!お菓子買いに行こ!」
ユウ「別にいいけどどこでやんの?」
アオ「公園とか?」
ユノ「どうせなら普段行かないようなとこがよくね?…うーん…あっ屋上は?!」
サヤ「だめでしょ。よく事務員さんの前で言ったね」
事務員「いいよ」
サヤ「いいの?!」
事務員「ほんとならもちろんだめだけど、今日は特別に。僕が下で色々やってるから、その間なら屋上使っていいよ」
ユノ「言ってみるもんだな…」
さしこ「よーし、じゃあそうと決まれば買い出しだー!買いまくるぞー!」
ユノ「このはちゃんも行こうぜ!」
先生「えっわたしも?!家で推しとお別れ会しようと思ってた…」
アオ「どうせ今もグッズ持っとるやん。変わらんやろ」
先生「まあそれはそうだけど…」
さしこ「ほら、アヤもいちごも行こ!」
アヤ「はいはい…」
いちご「わっ、わたしも?いいの…?」
さしこ「いっぱいいたほうが楽しいし、屋上なんて滅多に入れないよ。せっかく一緒にいるんだしさ!」
いちご「…うんっ…!」
ユノ「あーやべ寝てた…。うわめっちゃゴミ増えてるし。今何時?」
アオ「もう11時半だいぶ過ぎた。あと10分ぐらいで日付変わる」
ユノ「なんか全然終わる気配しなくね?」
サヤ「だから言ったじゃん。滅亡なんて簡単にするわけないの」
ユノ「じゃー予言はハズレか…」
ユウ「ま、終わんねえならそれが一番だな」
いちご「…えっ?」
アヤ「どうしたんだよ?」
いちご「今一瞬揺れなかった…?」
アヤ「揺れた?あたしはわかんなかったけど」
いちご「あっ…じゃあ気のせいかな…」
さしこ「なになに?どうかした?」
アヤ「や、こいつが…。!!」
(地震が起こる)
女子陣「きゃああああっ!!」
ユウ「おい、これって…!」
アオ「終わんねえじゃなかったのかよ…!」
サヤ「先生っ…!」
先生「みんな、頭を守って低い姿勢に!近くに掴まれるものがあったらそれを離さないで!無理に動いちゃだめ、今は収まるのを待って!」
ユノ「くそっ、これじゃ俺たちほんとにこのまま…!」
いちご「やだ、やだっ…!こんなとこで死にたくない…!」
アオ「おいいちご落ち着け!」
いちご「落ち着けるわけないじゃん!死んじゃうかもしれないんだよ?!まだまだやりたいこといっぱいあるのに…!こんなとこで死ぬなんて絶対やだ!」
ユウ「死ぬって決まったわけじゃねえだろ!」
いちご「死ぬよ!だって今までの予言はほとんど当たってた。なら今日だってきっとそうなる!しかもわたしたち今屋上なんだよ?!こんな高いところにいたら死ぬに決まってる!!」
さしこ「ちょっといちご…」
いちご「もうやだよ…死にたくないよお…!」
アヤ「いい加減にしろバカ女!!」
さしこ「アヤ…」
アヤ「『落ち着けるわけない』?そんなのあたしもだよ。『死にたくない』?そんなの全員だよ!お前だけがここにいるんじゃねえんだ、お前だけが地震に遭ってんじゃねえんだ。あたしたち全員が怖いし死にたくねえと思ってる。だからお前一人だけ苦しいなんて思ってんじゃねえ!」
いちご「……」
アヤ「これだって予言じゃなくてただの地震かもしれねーだろ。だったらあたしたちはここで死ぬわけにはいかねえ。いいか、今諦めたらマジで死ぬぞ。死にたくねえなら生きることだけ考えろ」
先生「そう、アヤちゃんの言う通りだよ。今はみんな生きることだけ考えて、耐えて!」
~間~
サヤ「…収まっ…た…?」
先生「みんな無事?!」
ユウ「1、2、3、4、5、6、7…8。全員いる」
アオ「…ってことは」
ユノ「俺たち…」
さしこ「死ななくて済んだ…?」
サヤ「今何時?!」
ユウ「…12時…1分」
いちご「……ノストラダムスの大予言が…外れた……」
アヤ「…な、だから言ったろ?」
いちご「………うん」
事務員「みんな無事?」
さしこ「山さん!山さんこそ大丈夫なの?」
事務員「うん、僕は大丈夫。みんなも大丈夫そうでよかった」
先生「こんな危ないところ、わざわざ来なくてもよかったのに…」
事務員「みんなが心配だったし、返さなきゃいけないものがあったので」
さしこ「え?」
事務員「ほら、これ。さっき借りたから」
さしこ「本…。これのために、わざわざ…?」
事務員「うん。…それじゃあ、下に降りてくるとき気を付けてね」
サヤ「…なんか、不思議な人だね」
さしこ「…うん…」
ユノ「はーあ、こいつのせいで散々だったな。(読みながら)何が『1999年の7の月に人類滅亡』だよ…ってあれ…?」
ユウ「何だよ?」
ユノ「……変わってる」
アオ「はァ?」
ユノ「『1999年7月』じゃ…なくなってる……」
さしこ「えっ何?どういうこと?何言ってんの?」
サヤ「さっきの地震で頭ぶつけた?」
ユノ「…いや、マジで。みんなも見ろよ。……ほら、ここ」
いちご「えっ…」
アヤ「おい…」
先生「うそ…」
全員「『2020年8の月、最後の週の金曜日』…」
おわり。
(最後のセリフは2020年8月28日の金曜日に上演したので当てはめました)