創作ボイスドラマ台本(5人用) 『Wolf!』

【あらすじ】
ある村で村長が無惨に喰い殺された遺体が発見された。しかもそこは人の姿をした狼が紛れ込んでいるという噂のある村だった──!?
犯人は村長の親族の姉妹か、第一発見者である騎士か、はたまたおいしいパン屋さんか──。
話し合いから人喰い狼を導き出せ!


*****


   SE 狼の鳴き声


高橋「落ち着いて聞いてください」
うつみ「何があったんですか?」
さやか「みんなを集めるぐらいなんだから相当なんだよね?」
高橋「…村長が、殺されていました。あの傷は喰い殺されたんだと…」
うつみ「うそ!?」
つきな「村長が!?」
さやか「村長って…村の偉い人ってこと!?」
うつみ「そうだよ、村長だからね」
つきな「ちなみにズルムケのハゲだよ」
高橋「そうです、そのズルムケのハゲが殺されていたんです」
さやか「大変じゃん…」
高橋「そうです、大変なんです」
うつみ「というか、喰い殺されたって言ってませんでした?」
高橋「はい」
うつみ「じゃあ、この村に人の姿をした狼がいるって噂は本当だったんだ…。誰がそんなことを?」
高橋「それがわからないからこうして皆さんに集まってもらってるんです」
つきな「じゃあ早くその犯人を捜して炙り出さないといけないってことね」
さやか「でも、犯人って動機がある人ってことだよね?それならうつみ姉じゃない?」
うつみ「え?」
さやか「ほら、なんかこの前言い争ってなかった?ズルムケさんと」
うつみ「いや、そんなこと…」
さやか「確か『お前の占いはインチキだ』って言われて、水晶割られてたでしょ」
うつみ「それは…!」
さやか「お仕事占い師だったよね?だったらそんなこと言われちゃ商売できないし、それでやっちゃったとか」
うつみ「いや、それは確かに言われたけど、だからって殺すとか…!」
つきな「叔父さんに占い師の命の水晶を割られて、カッとなって喰い殺した…って感じ?」
うつみ「違う!だったら言わせてもらうけど、つきなだってこの前叔父さんに怒鳴られてたよね?」
つきな「…ああ…」
うつみ「聞いた噂だけど、叔父さんが昔コンテストでもらった金メダルにかじりついたとか」
さやか「え、ほんと?おいしかった?」
つきな「…それはさすがに噂に尾ヒレがつきすぎ」
うつみ「じゃあ本当は何があったの?」
つきな「...かじりついてはない。ただ不注意で落として、欠けさせちゃっただけ」
うつみ「叔父さん、あれすごい自慢してたよね?そんなもの壊したってなったら謝るだけじゃ済まないでしょ。ひどいこと言われたんじゃないの?」
つきな「確かに言われたけど、私は殺してない。でもお姉ちゃんは水晶まで壊されたんでしょ?なら殺したくもなるよね」
うつみ「ちょっと何でそうなるのよ…!さやかもなんか言ってやってよ」
さやか「とか言って、商売道具壊されたんなら絶対恨んではいるでしょ。インチキなんて言われちゃったら、もうこの村では占いができないもんね」
山本「こんにちは~」
うつみ「さやかまでそんな言うの!?じゃあさやかはどうなのよ!?」
さやか「ハゲに興味ない」
うつみ「今ハゲ関係ない!」
さやか「そもそもあの人とそんな会ったことないし。動機ないよ、うつみ姉と違って」
うつみ「私も殺そうなんて思ってないって!」
山本「こんにちは…」
つきな「どうだか。呪い殺して喰っちゃったんじゃないの?占い師らしくさあ」
うつみ「うるさい!あんただって昔から力だけはあるんだから馬鹿力で殺したんじゃないの!?」
つきな「はあ!?力以外もあるし!」
うつみ「たとえば?」
つきな「猫と仲よし!!」
山本「こんにちはァ!!パンが焼けましたよォ!!」
高橋「あ、パン屋さん。こんにちは」
山本「こんにちは。どうしたんですか?こんなに殺伐として…。何かあったんですか?」
高橋「それが、村長が狼に喰い殺されてしまったんです。それで今犯人捜しをしてるんですよ」
山本「村長が…それは大変だ。それで、犯人は見つかったんですか?」
高橋「いえ、喧嘩になってしまいました…。それぞれ動機があるそうです」
山本「なるほど…それは時間がかかりそうですね。パンでも食べて、今日はもう寝ましょう。争ってもいいことはないですよ。平和にいきましょう。今日は私の自信作、ピーナッツバターパンですよ」
うつみ「ピーナッツ…?」
さやか「あ。わたしがリクエストしたやつだ」
高橋「…そうですね、一旦頭を冷やしたほうがいい。この続きはまた明日にしましょう」


   SE 狼の鳴き声、騎士が戦う音


山本「あ、皆さん早いですね。昨日はよく眠れましたか?」
うつみ「全然!もう意味わかんない、高橋くんが私の家に来たんだもん!のんきに寝られるわけないでしょ!」
高橋「どうしてそんなこと言うんですか!俺は守りに行ったのに!」
うつみ「物音で目が覚めたからよかったけど、あのとき私が起きなかったら変なことするつもりだったんでしょ!」
高橋「そんな、俺はただ守ろうと…!その物音だってきっと人狼と戦ったときのものです!俺は昨日確かに人狼を見たんです!」
うつみ「ウソ!そもそも、私の許可なく家の中にいたし!」
つきな「えっどうやって家の中に…?」
さやか「え、え、うつみ姉が起きる前は何してたの?」
高橋「…それは…」
つきな「人に言えないようなことしてたんだ…」
さやか「う〜わ…」
山本「…高橋くん、ちゃんと素直に言わないと疑われたままになってしまいますよ? いいんですか?」
高橋「……夜通し守るから夜食にと思って…うつみさんの靴下の糸を一本一本丁寧にほどいて麺にして、『うつみラーメン〜髪の毛を添えて〜』を作ろうと思ってました」
山本「は?」
つきな「『うつみラーメン』…?」
うつみ「サイッテー!!」
さやか「キショ……」
高橋「でも、ほどいてる途中で人狼が来たから未遂です!」
うつみ「やろうとしてたことが気持ち悪いの!」
高橋「でも俺は本当に人狼と戦ってうつみさんを守ったんです!信じてください!」
うつみ「ド変態野郎の言うことなんて誰が信じると思うんですか!」
山本「まあまあうつみさん、落ち着いて」
うつみ「いや!話しかけないで!」
山本「え?」
うつみ「あなたも私を殺そうとしたでしょ!」
山本「え…ちょっと待ってください、どういうことですか?」
うつみ「だって昨日のパンはピーナッツバターパンだった!」
さやか「どうしてピーナッツバターパンだとパン屋さんがうつみ姉を殺そうとしたことになるの?」
うつみ「私はピーナッツがアレルギーなの!あなたそれを知ってるでしょ!?」
山本「いやあれは…」
高橋「山本ォ!」
うつみ「あんたは黙ってて!」
高橋「はい!」
うつみ「とにかく…私を殺す気じゃなかったらあんなゲテモノ寄越さない!この人殺し!」
山本「『ゲテモノ』…?」
つきな「…山本さん?」
山本「お前も俺のパンをバカにすんのかよ…」
うつみ「は?」
山本「アレルギーなんか知るかよ。俺は世界一のパンを作ってんだ、俺のパンはもはや芸術品!素人がバカにしていい代物じゃねえんだよ!『まずい』?お前らの舌がおかしいんだ、狂ってんのは俺じゃない…パン屋のクの字も知らない奴が文句をつけるな」
高橋「パン屋にクの字入ってねえよ…」
つきな「…その言い方だと、他にも山本さんのプライドを傷つけた人がいるんですか?」
山本「あいつだよ、あのハゲ!俺のパンをまずいと言った挙句に『店を潰す』とまで言いやがった!村長だからって権力を振りかざして俺の店を…許せない…。あんな奴、死んでよかったんだ」
つきな「じゃあ山本さんが村長を?」
山本「俺はやってない。ありがたいことに、殺しに行ったら狼の奴が先に殺してくれたからな」
さやか「え〜ほんとかなあ…あっそうだ、うつみ姉って昨日占いはしたの?」
うつみ「あ…うん。パン屋さんを占った」
さやか「ふーん。結果は?」
うつみ「水晶が割れててぼんやりとだったけど…白だった。でも絶対に黒!間違いないから!」
つきな「どういうこと…?」
さやか「えー…じゃあ追放するとしたら誰にする?今のところ高橋くんかパン屋さんが候補かな」
山本「別に俺を追放しても構わないが、食いっぱぐれるのはアンタ達だぞ」
さやか「ああ…それは困っちゃうね。じゃあ高橋くんでいい?」
高橋「ちょっと待ってくれよ!」
つきな「私もそれで賛成。隣の村で靴下ラーメンでも作ってたらいいんじゃないですか?」
高橋「…うつみさん…」
うつみ「…いいと思う。こんな変態、早くいなくなってほしい」
さやか「決定だね。それじゃあ高橋くん、さようなら。ラーメン屋さん、繁盛するといいね」
高橋「(アドリブ)」


   SE 狼の鳴き声


うつみ「おはようございます」
つきな「おはよう」
うつみ「え…これで全員?」
さやか「うん。メンズが全滅しちゃった」
うつみ「じゃあ、昨日はパン屋さんが…」
つきな「みたいだね。どうやらあの人を追放しなくても私たちは食いっぱぐれる運命だったみたい」
うつみ「じゃあ…つきな、あんたが人狼なんだね?」
つきな「…どうして?私からしたらお姉ちゃんも人狼の候補だよ」
うつみ「私は私が人狼じゃないことを知ってる」
つきな「うーん…それは理に適わない論理だね」
うつみ「私の占いの結果も人狼はあんただって言ってんの」
つきな「へえ…じゃあ昨日は私を占ったんだ?」
うつみ「ううん、さやかを占った。でも白だった」
つきな「それで消去法で私か…なるほどね」
うつみ「ちゃんと言って。叔父さんを殺して、パン屋さんまで殺したのはあんたなんでしょ?」
つきな「…だったら何?」
うつみ「え?」
つきな「私が白状して、お姉ちゃんにできることって何?騎士もいないのにどうやって私から逃げるの?」
うつみ「それは…あっ、さやか!さやかがいる。さやかとふたりで協力して、あんたを殺す」
つきな「『さやかと協力』…できるの?」
うつみ「…どういうこと?」
つきな「最初の日のこと覚えてる?パン屋さんが、お姉ちゃんが食べれないピーナッツバターのパンを持ってきたときのこと」
うつみ「…それ今関係ある?」
つきな「あのときさやかはそのパンを見て、『わたしがリクエストしたものだ』って言ってた」
うつみ「…あっ…」
つきた「だからさやかはこっち側の人間だってわかった。さやか、そうなんだよね?」
さやか「うん。わたし、つきな姉が人狼だってずっと前から知ってたから。あの人たちだけで揉めるように仕組んじゃえば、つきな姉に矛先が向くことはないかなと思って」
つきな「叔父さんを殺したあと誰かが来る気配がしたから心配だったんだけど…あれは山本さんだったんだね。自分で教えてくれてよかった」
さやか「上手くいってよかったね」
つきな「そうだね。あとはお姉ちゃんを殺しちゃえば全部終わる」
うつみ「ちょっ…ちょっと待って!私誰にも言わないから!私たち姉妹でしょ!?」
つきな「別にそれを信じてもいいけど…うっかり言わない保証もないよね。お姉ちゃんが死んじゃえばそんな心配をすることもなくなる」
さやか「高橋くんには少し悪いけど…しょうがないもんね」
つきな「じゃあね。お姉ちゃん」

 

   全員ハケ
   SE オオカミの鳴き声

 


役名/役職

瀬戸うつみ(姉)/占い師
瀬戸つきな(妹)/人狼
小田さやか(いとこ)/狂信者
高橋いつき/騎士
山本あきら/パン屋

散歩をしよう!

 

 

 最近は以前より食が細くなったようで、すぐお腹がいっぱいになってしまって少し困っています。

 わたしは舌が肥えているほうではなく大体のものはおいしく感じられるので、食べることは結構好きです。なのでたくさん食べて「ああいっぱい食べた、おいしかった」と思いたいのですが、近頃は「まだ食べたいのにもう食べられない」という悲しい事態が起こっています(ちなみにこれは追加の話であって、食事を残すわけでは全くないのでご安心ください)。

 だからたくさんお腹をすかそうと思って、不定期ではありますが歩いてみることにしました。距離は特に決めていません。行きたいところまで行って、帰りたくなったら帰ります。

 

※ルートはそれなりに色々歩いたのですがいい写真が撮れない日も多々あったので、季節をかなり跨いでいます。そういえば今年は秋をあまり感じられませんでしたね。

 

 

 

 

 

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 歩きに行こうと玄関で靴を履いていたら網戸にニイニイゼミがいました。わたしは蝉の中でも体が小さくあまり出会うことのないニイニイゼミツクツクボウシが好きなので、とても幸先のいいスタートです。

 のんびり夕方の街を歩きました。

 あんなにうるさかった蝉の合唱も小さくなっていました。少しずつ季節が終わっていきますね。けれど歩いていると少し汗ばむぐらいの気温で、まだ夏の余韻は残っているようです。

これで蚊もいなくなってくれればもっとよかったんですけどね。

 

 

 

              ↓母f:id:shr0319:20210928224157j:image

 この日は母も一緒だったのですが、わたしが歩くのが遅すぎてかなり序盤で置いていかれてしまいました。どうして。

 

 道でいろんな虫が死んでいました。

 そういえば、一説によると虫には痛覚がないそうです。一生が長くないから、痛みを学習して未来に経験するであろうより程度の重い苦痛を回避する必要がないらしいですね。

 一生が長いにしてもなるべく痛みは経験しないほうがいいと思うんですけど、どういうつもりなんでしょうかね、人間の脳は。

 

 

 

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 気付いたら夏の終わりを肌で感じられる時期になっていました。コオロギやキリギリス、スズムシの鳴く声が聴こえます。

 道中でキリギリスの子どもを見つけました。

大人しい子でしたが、帰り道でお別れするまでちょくちょく親指をかじられていました。食べないで。

 公園で子どもたちが遊んでいました。わたしも昔は外遊びが大好きでしたが、歳を重ねた今ではすっかりインドア派で、”晴読雨読”という感じです。最近ようやく積んであった本をすべて読み終わりました。

 

 

 

 道中の写真ばかりもアレなので歩きながら聴いている音楽も載せます。と言いつつ毎回ほとんど同じ曲ばかり聴いているんですけどね。

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  indigo la Endの『夜風とハヤブサ』。夏終わりかけてるんですけどね。

サビの「あなたが好き 私がフォトグラファーだったら 夏って感じで切り取るのに」という部分が好きすぎて、聴くたびに「好きだ…(脳死)」となります。

 

 

 

 

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 たまに友人たちと行っていたカラオケ店が見る影もなくなっていました。ガラス扉の向こうは瓦礫の山で、前までそこに何があったのかはもう我々の記憶でしかわからないようです。

 ですが、いつかその記憶もなくなって、古い思い出は新しい当たり前に淘汰されていくのでしょう。

 思い出があった事実は消えませんが、記憶はやはり消えてしまうものです。少しずつ薄らいでいって、最後には雪のように儚く溶けて消えます。しばらくすればそこに雪があったことすら忘れてしまうでしょう。

 憶えていたいことはたくさんあるのに、わたしたちの脳はそれを許してはくれません。「さよならだけが人生だ」というのはあながち間違ってはいないのかもしれませんね。

 

 

 

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 ネコチェンがいました。

わたしは好きな映画館があるこの通りが好きなのですが、愛しい風景がまた増えました。でも野良猫は本当はあまりいてはいけない存在なので、複雑です。

 今はサブスクなどで映画が手っ取り早く観られてしまう時代ですが、わたしは映画を観るときは絶対に映画館で観ます。

 その理由としては、わたしは「映画館」という空間が大好きなので、そこで映画を観ることに大きな意味があると思っているからです。

 映画館まではそれなりに距離があるし、特別安くはないお金を払っても期待していたほどではないときも時にはあります。ですが、それもいい思い出になります。

 「映画を観ること」は「経験すること」です。お金や移動の手間をかけずに映画を観られるのは楽でいいことかもしれませんが、そうやって気軽に観られるからこそ失ってしまう大事な感覚もあるとわたしは思います。

 とはいえタイミングが合わなくてリアルタイムでは上映されていないときももちろんあります。そういうときは仕方がないのでレンタルショップで借りてテレビ画面で観ます。

 わたしは手間が好きなのかもしれません。

 

 

 

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 空が綺麗な日でした。うろこ雲は秋の代表的な雲ですね。

 「読書の」「食欲の」「芸術の」などという枕詞がついたりする季節ですが、実際のところはどうなんでしょうか。

わたしは季節関係なく読書も食事もアートも楽しんでいるので、あまりピンと来ていません。大抵のことは秋でなくとも十二分に楽しいので…。

 でも、散歩は秋がいいかもしれませんね。涼しくて歩きやすいし、虫たちの鳴き声も季節を感じさせてくれます。

 

 

 

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 この日もぼんやり歩いていました。この辺りから写真を撮ることが趣旨になっていることを確信しました。

 歩きながら赤いライトに照らされた黄色い花を撮りました。説明がないと全くわからない写真ですね。

 

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 これは見ての通り、通学路を示す標識です。フォントがいいなと思ったので思わず撮ってしまいました。

 フォントの話は以前このブログでもしましたが、わたしは少し癖のあるフォントが好きです。たとえば「筑紫B丸ゴシック レギュラー」や「姫明朝ともえごぜん」、「数式フォント」も素敵ですね。もちろん他のフォントも素敵です。

 文字の持つイメージを線の幅や曲線、角度を駆使して伝えるのって、よく考えるとすごいことですよね。2次元のものをどうにかして3次元に近付けている。

結局それが平面から出ることはないけれど、こだわればこだわるほど読み手が受け取れる文字の情報は確実に多くなるでしょう。これはとても素晴らしく、尊いことです。

 フォントって、ホントにいいものですね。

 

 

 

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 閉店後のスーパーの横を歩きました。

 青緑のライトが中を照らしていて何だか不気味でした。

 調べてみましたが、お店が閉店後も照明を落としきらないのはどうやら防犯カメラの照度の問題が大きそうでした。あとは衛生上の理由(”殺菌灯”と呼ばれているそうです)とか。

 とはいえこの中に物盗りで入りに行くのはなかなか勇気がいりそうですよね。ホラゲ脳が騒ぎます。

 

 

 

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 銀杏BOYZの『少年少女』をリリースされてからというもの、かなりの頻度で聴いています。この曲を聴くとなぜか走り出したくなります。

 わたしは峯田さんが書く、純粋で青臭いまである春の詩が大好きです。銀杏BOYZを初めて聴いたその次の日にはCD屋さんに行ってアルバム2枚とシングル1枚を買っていました。

 わたしは『BABY BABY』と『エンジェルベイビー』、『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』が特に好きです。『いちごの唄 long long cake mix』も好きです。『夢で逢えたら』も。つまるところ、好きです。

 

 

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 これは今まで撮った中でも特に気に入っている写真です。

 ここはクリーニング屋さんです。

わたしはこの街にそれなりに長く住んでいますが、このお店が開いているところはまだ1回も見たことがない気がします。でも表の緑は枯れることなくむしろ見るたびに増えている気がして、不思議です。わたしとタイミングが合わないだけなんでしょうか…不思議です。

 

 

 

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 これはアルバイトの帰りにぼんやり歩いているときに撮った夜の空です。肉眼では星がたくさん見えたのですが、カメラにはあまり写りませんでした。

 

 ところで、冬は他の季節に比べて星が綺麗に見えますよね。

それは空気が乾燥しているから、というのと、冬は日が出る時間が短く太陽の光が雲などに映る”残照”というものがあまりないから、という理由があるそうです。

勉強になりましたね。

 

 

 

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 髪を切った帰り道にレンタルしていたCDを返しにいきました。写っているのは「止まれ」の”ま”の部分です。

 髪はばっさり10cmほど切りました。髪を切ってから数日経ってもなおドライヤーのときに恐ろしいほど髪が落ちてくるのが本当に心配でした。絶対抜け毛。かなしい。

 

 

 

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 あてもなく歩くのは楽しかったです。

ぼんやり歩いて、帰りたくなったら家を目指してまた歩く。音楽を聴きながらいつもは流してしまう景色を歩くスピードのまま眺める。

見慣れた風景でも普段注目しない部分に目を向けてみると、意外と新しい発見があるものです。花が咲いていたり、確かにあった建物が見る影もなくなっていたり。

 そして何よりご飯がおいしい。

ただぼんやり歩いて帰ってきただけで、温かいご飯がよりおいしく感じられる。ありがたい話です。

当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、これはとても重要なことだと思います。

 

 実は”日常”というものは、非日常の繰り返しでできています。

それには予期せぬアクシデントだけでなく、誰かと友達になったり恋をしたりすることも含まれます。そういった”非日常”に慣れた先にあるのがわたしたちが当たり前としている”生活”なのだとわたしは思います。

 産まれたばかりのときの記憶なんてほとんどないけれど、当時だってきっと初めての出逢いばかりでそれに戸惑って泣き叫んでいたのでしょう。”わからないこと”は怖いから。

 でも、わかろうとして、そして実際にわかっていくことはとても楽しいです。苦しい勉強でもわかってみれば意外と楽しく思えるように。

 

 生きていると年齢を重ねていくわけですが、それでもわからないことは尽きません。きっと死に至るときさえそれらが全て解決することはないのでしょう。

 でもそれでいいとわたしは思います。人生において全てがわかってしまっては面白くないですから。

 「たかが散歩で人生を語るな」と思われるかもしれませんが、果たして本当にそうなのかは皆さんの足で確かめてみてください。

少なくとも健康には近付くはずです。

 

 

 

クリームソーダ小旅行記

 

 

 皆さん、クリームソーダはお好きですか。

 

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 わたしは大好きです。世界一美しい飲み物。

その中でも、純喫茶で出されるクリームソーダはまた格別です。店の雰囲気からもう美しい。

 もはや古めかしいまである”昔”の記憶にあふれる店内で味わう、”ハイカラ”というにふさわしいクリームソーダ。小さな泡がしゅわしゅわ弾ける色鮮やかな炭酸に、優しくとろける味わいに刺すような冷たさのバニラアイスが乗っています。うーん、最高ですね。

 

f:id:shr0319:20210711212233p:image実はクリームソーダはこのブログのアイコンにもしています。よく見るとちょっとアンバランスだね。

 

 先日観劇で遠出した際に、どうせ行くならずっと行きたかった純喫茶クリームソーダ小旅行もしようと思って、早めに現地に入ってひとりで純喫茶を巡りました。

 時間の都合などもあり4軒しか行けませんでしたが、その日は全食クリームソーダのとんでもなく幸せな日でした。

ちなみに舞台も凄かったです。観てからというもの精神に異常を来しております。

 

f:id:shr0319:20210711214305j:imageザクロ味の赤いクリームソーダ。クリームソーダは緑だけではないのだ。

 

 純喫茶というのは一見では何となく入りにくいイメージがあります。年齢が若いとなおさら。

実際わたしもいざ入るときは少し緊張しました。ひとりだったので誰もついていてはくれないし。

 でも、ちょっとだけ勇気を出して扉を開けてみると、そこには思わず感嘆の息が漏れるほどノスタルジーな空間が広がっているのです。

 

f:id:shr0319:20210711212429j:image見渡す限りの時計。右下にいる赤いのはデカめの金魚。

 

f:id:shr0319:20210711214628j:image上とは違うお店の地下空間。居心地のいい独房かと思った。

 

 「本や映画でみて憧れたあの喫茶店の中に自分がいる」。そう思うと感動しました。

 それはまさに”非日常”でした。扉を開けただけで、わたしはうだつの上がらない日常から切り離されて、ただ”クリームソーダ”という宝を求めて旅をする旅人になっていました。

 

f:id:shr0319:20210711212522j:image海を思わせるような美しい青に計90グラムの2つのバニラアイス。その量は一杯だけで余裕で一食に匹敵する。

 

f:id:shr0319:20210711212749j:imageアイスが溶けるとグラデーションが生まれてまた違う美しさが。

 

 ”純喫茶”という空間にいるのはとても楽しかったです。

二次元で焦がれ続けてきた内装を三次元として自分の目でしっかりと見て、美しいクリームソーダを視覚と味覚で味わって、少しマスターとおしゃべりしたりして。

 あのときのわたしは無敵だった。

そう思わせてくれるぐらい、あのクリームソーダたちは素晴らしいものでした。

 

f:id:shr0319:20210711215006j:image初めて黄色のクリームソーダを見た。このお店には他にも赤、青、緑、紫、オレンジのクリームソーダがある。ちなみにここは先程の地下空間があるお店。

 

 クリームソーダを飲んで店を去る謎の若い女

映画だったら店を去ったあとにスパイ活動とかしたり人を殺したりとかするんでしょうけど、わたしはただ観劇をしただけでした…恥ずかしながら。

 本当にクリームソーダのためだけに各地を回っていたので、その街を細かく見られなかったことが心残りです。まったく知らない土地を見て回るのも好きなので、もし今度また機会があれば、それも含めてクリームソーダを楽しみたいです。

 

f:id:shr0319:20210711220437j:image今回唯一出逢ったさくらんぼ入りクリームソーダ。鮮やかな水色に赤い果実がよく映えていて感動した。

マスターさん、お客さんがいるのに普通に客席座って新聞読み始めててほっこりした。

 

 数日経った今もいい一日だったなぁ、とすごく思います。一日を通して充実しすぎて、その日はほぼ気絶して眠りに就きました。

 ずっと美しいものを見ていたから、脳が処理しきれなかったんだと思います。美しいものというのはそれだけで人を狂わせるので。

ちなみに”美しさに狂わされる”というのはオークションなどがいい例ですね。

 

 

 今はどうにも息苦しい状況ですが、たまには美しいものを取り込んで心をときめかせるのもよいのではないでしょうか。もちろん節度は守って、周囲への配慮を忘れずに。

扉が開いていないだけで、美しい世界はいつでもそこにあります。

 

f:id:shr0319:20210711213006j:imageたとえばこんな風にね。

 

 

 

 

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放課後ソーダ日和【第1話:特別な時間のはじまり】映画『少女邂逅』のアナザーストーリー 森田想×田中芽衣×蒼波純/ 羊文学【フルHD推奨】 - YouTube

わたしがクリームソーダに惹かれたきっかけの作品です。物語は全9話なので、お時間がありましたらぜひ観ていただきたいです。少女たちのひと夏の冒険のお話です。

 

 

こちらはわたしが今回お店を訪ねる際に重宝した本です。全国津々浦々のクリームソーダと純喫茶が載っているので、地元や旅先のお店を探すときの参考になるかもしれません。見ているだけで楽しくなります。

 

 

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f:id:shr0319:20210711231217j:imageもちろんご飯もおいしいよ。

 

 

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自室の話

 

 

 部屋の模様替えをした。結構ド派手に。

 

 

 具体的に言うと、本棚と机の位置を変えて、新しくベッドを置きました。齢20にして人生初ベッドです。

 それから、飾ってあるポスターなどをすべて一新しました。ついでにイケメンの生首うちわなども飾ったよ。

 

 十何年も住んでいた部屋なのに新しい木のにおいがして、入るたび家具屋にでも来ている感覚がする。でも床にある勉強机の日焼けの跡が、古い部屋の記憶を教えてくれる。

 

 

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4つ並んでいるのは最果タヒ展で買った「詩そのものカード」。そういう仕様ではないんだろうけど、触ると黒いインクのようなものが指につくのが生々しい気がして気に入っている。

 

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上にあるのは会場案内の裏にあった最果タヒの「好きだ」。わたしはこの人が紡ぐ叫ぶような言葉が好き。

 

 

 たくさん物を捨てた。

昔気に入っていて数えきれないほどローテーションした服に少し前までは大好きだったアニメのグッズ、話についていけなくなって途中で買うのをやめた漫画、小さい頃から世話になった大小さまざまなぬいぐるみたち。

 部屋とクローゼットを埋めつくしていたそれらがなくなると、まるではじめからそうであったかのようにすっきりとした部屋になった。

 今のわたしの部屋には、もう数年は着られる落ち着いたデザインの服にずっと変わらず大好きなアニメのグッズ、何回読み直しても飽きない本と心ときめくぬいぐるみたちしか残っていない。

 

 

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これも最果タヒ展で買った「モビールそのものブックマーク」。風が吹くと裏面が見える。

 

 

 母に、「やっと部屋らしくなった」と言われた。

では今までの十数年わたしが過ごしていたこの場所を一体何だと思っていたのだろうかと思ったが、言われてみれば確かにそうだと実感する。

 

 今のわたしの部屋は、人が帰ってくるのが当たり前のような、そういう面構えをしている。

 ベッドがあって、あたたかなぬいぐるみがあって、たくさんの愛しい本があって。壁にはいつ見ても恍惚とするほど好きなものが常に貼ってあって。

 

 言葉にするなら、部屋の持つ温度がわたしのためにあるような、そんな感覚だ。

以前からそうではあったんだろうが、前は寝たり授業を受けたりするためだけに部屋を使っていたし、ある程度まとめてはいたが床にも物がたくさん置いてあったから、ほとんど物置のようだった。

 それが、床のものを全部どけて、壁、机の上、普段は見えないクローゼットの中まで整理してみると、一気に部屋のようになった。そこに木でできたベッドが入って、いよいよ人が生活する部屋が完成した。

 そうしてわたしの部屋は、十年以上もの時を経て、ようやくひとつの完成形となったのであった。

 

 

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選抜ぬいぐるみの一部。左上のシロモを手に入れるのにかかった金額は5000円ほど。逆に2つのミッフィーは合計300円ほどで手に入った。機械の設定もあるだろうけど、クレーンゲームの手腕に波がありすぎる。

 

 

 今は部屋に向かうたび木のにおいを感じて、新しい気持ちになる。わたしはこのにおいが好きだ。

 ちなみに夏頃にはエアコンが入る予定だ。

 わたしの部屋は、どんどんわたしの世界のすべてになっていく。

 

 

 

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ちなみにエロ本は鍵つきの引き出しに隠したい派です。

 

 

 

5月の終わりとチョコレート

 

 

 バレンタインに、母親にチョコレートをあげた。

デパートの催事場に売っていた、わたしぐらいの年齢には少し高いチョコレート。見た目が綺麗だったから買った。

 それを一緒に食べたとき、母は「おいしくないね」と言って顔をしかめた。実際、舌がバカで大抵のものはおいしいと感じるわたしですら「おいしくない」と思った。

  今、ふとそれを思い出してこういう瞬間がたくさんあればあるほど人生は煌めくのだろうなと思った。

 

 

 わたしたちは同じ人間にはなれない。友達も、恋人も、夫婦も、家族も、逆立ちしたって同じ人間になることはない。たとえ同じものを見ても、それぞれの感想を抱く。

 けれど、何気ない瞬間に、同じ経験をして同じ感想を抱くことがときどきある。ポジティブなものでも、ネガティブなものでも。

その瞬間に出逢えることは、実はとても幸せなことなんじゃないかと5月も終わる今にわたしは思った。

 ひとつにはなれないけど、せめて共通項を大事に抱えていたいね。

 

 

 人生ってなくすばっかりでつらいと思うんですけど、それでも周りに目を向けてみると意外と幸せの成分みたいなのが落ちていたりするので、それを拾ってなんとか持ちこたえていたいですね。

たまには短めなブログもいいかと思って書きました。

 

皆さんも何とかお元気で。またね〜

 

 

主人公になれない

 

 

 わたしは主人公になれない。

 

 ドラマチックなあれこれを期待したところで、それらはすべて頭のなかで死んでいく。

午前3時にさして好きでもないスライムのASMRを聴いて、動画を撮り終わったあとのスライムの行方や、これに性的興奮を覚える人間が一定数いるんだろうか、などと思案しているのだから、当然といえば当然かもしれない。

 主人公はスライムの未来になど興味はないし、そもそも午前3時は美容と健康のためとっくに寝ている時間だろう。

 

 

 わたしは奇跡などというものが起こらないことを知っている。

面白味のない人生をさも面白そうに生きているだけの道化には何も起こらない。言葉はわたしを救わないし、音楽は耳元で流れるだけだ。

 

 

 

 知らない誰かの何のひねりもないあたりまえの言葉が、大好きなあの人を救ってしまう。

わたしはあの人がそんな人だとは思っていなかった。あの人は、ずっとそのなかにある宇宙で、のんきにひとり揺蕩っているのだと思っていた。

 誰かに簡単に救われてしまうような人だなんて、知りたくもなかった。

 

 

 どこか「特別」であることを期待して人を見てしまうけれど、人というのは案外皮以外はみんな一緒で、やはり性悪説は正しかったのだと思う。性善説性悪説も黒く汚れることが前提である。見知らぬ始まりが白かったとして、一体誰がそんなことを気にするのだろう。

 

 

 

 悲しいことはずっと悲しい。

 しあわせな夢を見るたびに、「このまま覚めなければいい」ではなく、贅沢に「見たくなかった」と思う。

夢なんて見たら、それ以外の世界がしあわせではなかったと気付いてしまうから、だめだ。夢で会うたびに、もうここでしか会えないのだと思い知らされてしまう。

 今が平安時代だったらあの人がわたしのことを想っているから夢で会えるのだと思えるのに、今は平安時代ではない。2021年の令和時代である。わたしが未練たらしく、言葉にするには赤すぎる想いを抱えて浅い眠りに就いているから、夢を見るのだ。

 

 恋は、血と燃え盛る炎と、ほんのちょっとのリコピンなどを含んでいる。だから赤くてはじける。肌の健康にもいい。ほとんどトマトみたいなものだ。だから酸っぱいし、愛の種があるんだぜ。みんな知らなかっただろ。

 でもわたしはトマトが嫌いだ。なぜならみずみずしく、酸っぱいから。いいトマトに出逢えていないだけかもしれないけど、出逢っていないのなら ないのと一緒だ。

これはほとんど運命みたいなものだね。人が運命を信じない理由なんてそれだけだ。

 自分の目で見て自分の心で感じたこと以外を信じるなんて滑稽すぎる、そうだろ?

 

 

 わたしも無責任に「愛してる」が言える人間になりたい。

その奔放な言葉で誰かを縛りつけて、どこまで行ってもどこにも行けない糸で繋がっていたい。

一生消えない刻印のような愛で、「あなたの居場所はここです」と教え続けてあげたい。

 たくさんの本当で塗り固められた世界で、わたしだけが本当の嘘つきでありたい。そして、積み重ねた嘘で、わたしたちの世界を守りたい。

 

 

 

 思い出を玩具にして自分を慰めるのもよくないことだと、本当はわかっている。絶頂したあとに流れるのはいつも、涙と、ひとつの名前しかないエンドロールだ。

ぐったりと身体を横たえたところで、隣には誰もいないし、聞きたい声も聴こえない。

 

 

 

 わたしの愛は、いつもあの人の形をしている。

 

 

 

ド陰キャによる成人式の記録 ※わりとつらい

 

 

 朝7時半に起きて、8時には美容室にいた。

 

 

朝っぱらから髪の毛をぐるぐる巻きにされたり熱でねじられたりしていた。

 頭はヘアピンまみれ、最後に髪飾りを突き刺され、場所を移動して次は着物を着付けてもらう。

 

 着付けの部屋に入って居合わせた相手は、なんと中学で部活が一緒だった同級生であった。

もし人違いだったら怖くて、話しかけられないままその子の着付けが終わった。声で彼女がやはり美術部でよく話していた彼女だったことがわかった。

 後悔していると、わたしの着付けも終わった。あまり着付けが上手な人ではなかった。

 

 仕上げに化粧をしてもらう。わたしは人の息が手にかかるのがあまり愉快ではないため、メイクさんにもそう思わせないよう手が接近しているときは息をあまりしないようにした。かなり苦しかった。

 

 

 すべてが終わって一旦家に帰った。

祖父母に晴れ姿を見てもらう。なんだかもう泣きそうだった。

 受付開始に間に合うように準備を終わらせてすぐに家を出た。わたしはもう少しゲームをしていたかったが、母に怒られてスタミナを残したまま渋々車に乗った。車の中で音ゲーをすると酔ってしまうから、もうゲームはできなかった。

 

 

 会場に到着。

バカクソに密だった。新型のコロナウイルスが流行ってるって本当ですか?

 フッサフサの白い毛を肩に乗せた、誰が誰かもわからない女の子たちが写真を撮ったり手を取り合ったりして嬌声を上げていた。男は男でなにやら群れていた。

 離れるよう指示する拡声器を持ったおじさんたちが狂うほどやかましかった。普通拡声器使うなら人の頭より上に向けるだろ。耳元で叫ぶな、俺はお前の敵なのか?

 

 

 友だちがいないので秒で会場入りした。

 

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母からのLINE。よくないよ、こういうの。

 

指定された座席に座り、即イヤホンを耳にはめる。これでわたしはもうひとりじゃない。もう一度音ゲーを開いてスタミナを消費した。これでスタミナは使い切ったのであとはもうずっと音楽を聴いていた。傍から見ると完全に服装と髪型以外成人式向きではない女の出来上がりだ。

 

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当時のインスタに上げたストーリー。文字通り目が死んでいる。

 

 

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そしてこれはキレるかと思ったDM。返信がもう陰キャのオタクだね。

 

 

 式典の最初は国歌斉唱、のはずだったが「飛沫防止のため心の中でご唱和ください」とのこと。もう何の時間なんだ。

 どこかのバカが「き〜み〜が〜ぁ〜よ〜ぉ〜は〜」と馬鹿でかい声で歌っていたが、下手だし他に誰も続かないし誰も笑わないしで最悪だった。そこまで歌って、さすがに恥ずかしくなったのかもう歌わなくなった。その羞恥心があるならはじめから下手な歌を聞かすなばかたれ。

 よくわからんおじさんたちのありがたそうなお話を聞いて第一部は終了、そして休憩なしで第二部が始まった。分ける意味あったか?

 

 新成人の決意表明ということで各中学校からひとりずつ代表が喋っていた。陽キャが見事にスベっていて、本当に申し訳ないが少しだけ気分が晴れた。ウケって狙ったときに限ってスベるよね。わかるよ。

 

 

 続いて恩師からのビデオメッセージ。

なぜか全く関係ない学校の先生の映像で涙ぐんだ。昔はそういう類のものはチベットスナギツネの如き眼差しで観ていたものだが、最近妙に涙が出やすい。

 

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チベットスナギツネ。

 

 自分の中学校の教師陣からのメッセージではもちろん泣いた。恩師らしい恩師はひとりしかいなかったが、ほぼ全員で泣いていた。ヤバい奴だろ。さっきまでイヤホンで音楽聴いてたような奴だぞ。何でなんだよ。

 

 

 情勢のおかげで短く済んだ式典が終わって会場を出たところで、高校で出逢った、たまたま地元が同じで中学は他校の友達と待ち合わせて会った。それまでガチでひと言も発さなかったので、そのときようやく声帯を震わせることができた。一緒に写真を撮った。

 

 そのあとは、会場係に促されて中学3年生のときの教師陣が待つという別会場へ向かった。恩師に会いたかったのだが、別で仕事があったらしく会えなかった。

 見渡すと自分の学校の同級生らしい人たちが集まっていたが、もう誰が誰か全くわからない。男も女も化けすぎだろ。あの純朴だったあなたたちに会いにきたのに、誰だあんたたち。

 

 あの頃、というか3年生のときはわりとクラスのみんなと仲がいいと思っていたが、誰にも話しかけられなかった。

 これは本当にびっくりするのだが、ガチで誰にも話しかけられなかった。陰キャってこんなに苦しいっけ?とかなり憔悴した。確かにわたしは眼鏡も髪色も変わってはいたが、それが原因ではない気がする。

絶対陰キャだからだ。わたしが犯罪級の陰キャだから、話しかけるほどでもない、もしくは誰の記憶にも保存されていない存在にまでなっていたのだ。わたしはあの場にいた全員の敵だった。恐らくわたしはあの地域の中学校の卒業生ではなかったのだ。ほら、この文章だって文字なのに早口に見えるでしょう?それぐらいわたしは救いようのない陰キャなのだ。もはや病気レベルで。助けてくれ。

 

 

 そして、どうやら中3(15歳)の自分からの手紙があるということで、先生方がいるブースへ向かった。

 

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実際の手紙。当時の自分の悪いところがすべて出ている。


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せっかくだから返事を書いた。最悪な気分だった。

 

 わたしが自分の名前を伝えても受付の先生方の顔が晴れることはなかった。他の生徒と当時や現在の話で盛り上がっていたあとなのに本当に申し訳なかった。誰かよくわからん着物だけが華やかな陰キャが水を差してしまった。

 恩師は今どうしているか、と尋ねると「元気に仕事をしている」と返ってきて安心した。わたしが卒業したあとに転任したと聞いていたが、戻ってきたのだろうか。話している最中はそこまで頭が回らず聞き損ねてしまった。

 「何か伝えておきますか?」と言われたので「元気に役者みたいなことをやってるので、そうお伝えください」と言っておいたが、果たして他クラスのほぼ面識もない超ド級陰キャの言伝など帰るまで覚えておいてくれたのだろうか。

 

 

 それでもうやることは済んでしまったので、帰宅することにした。

 これも本当にびっくりする話なのだが、怖くてその先生方がいるブースになかなか足が進まなくて、そこに行くまでに1時間もかかってしまった。もう頭がおかしいとしか思えない。お医者さんに脳みそと心の治療をしてほしい。

その間ずっと待たせていた高校の同級生と母には本当に申し訳なく思っている。

 

 

 帰りの車中、自分が惨めすぎて泣いた。

 何万円もするメイクアップ代を「一生に一度きりだから」と母や祖父母に出してもらったのに、誰にも話しかけられず、自分からも話しかけられずに、本当に何もないまま人生で一度きりの成人式を終えてしまった。

 当時好きだった人もすぐ見つけたのに、何もできなかった。話しかけるどころか目すら合わせられなかった。

 

 その人はスイミングをずっと習っていて、学校でよく表彰されていたような人だった。そして家も近所の幼なじみで、小さい頃はよく彼の家で遊んだものだった。

 彼はひと目でわかるほどの当時の面影はあったが、髪の毛もきちんとセットしてスーツでばっちり締まっていたから、あの頃の野暮ったさがどこにもなかった。顔はもともと目鼻立ちがくっきりしていて整っていたほうだと思う。

 周りの女の子が「あの子かっこよくなったね」と囁きあっているのが聞こえた。わたしもそう思った。あいつ、中学のとき付き合ってた女に「重い」って言われて別れたらしいけど、また新しい彼女とかできたのかな。できただろうな。あんなかっこよくなっちゃってるし。小学校の頃実は両想いだったとずっと後に誰かから聞いたとき、なぜかわからないけどものすごく後悔した。子どもだから恋も愛もよくわからなかったけど、あの人のいいところはそれなりに知っていた。後から何を思ったところで時間は戻らないのにね。

 

 

 ぜんぶぜんぶ惨めだった。歳を重ねるごとにどんどん自分が情けなくなっていく。わたしはこんなことを思うために大人になったのだろうか。

 地元のことはそれなりに好きで、中学も、3年生のときのクラスはとても楽しかった。陽キャのみんなとも分け隔てなく話せて、陰キャにしてはクラスでも存在感があるほうだった。

 そんな奴が、誰からも話しかけられず自分からも話しかけられないなんて、どういうことなんだよ。何のために高い金払ってもらって立派な着物まで着せてもらったんだよ。何のためにクソ寒い中会場に向かったんだよ。何してんだよ、お前。バカかよ。死んでくれ。こんな自分、死んだほうがずっといい。

 情けないわたしは、失ってはいけないものばかり失って、得ないほうがいいものばかりを身につけていく。

 

 この文章だって、もう何のために書いているのかわからない。せめてエンタメに昇華したいと思って筆を執ったのに、後ろ暗いことしか書けない。それぐらいわたしは自分の成人式がつらかった。

例の高校の友達がいなかったら、わたしは本当に口さえ開かないまま家に帰っていたことになる。会おうと言っていた、中学から唯一まだ繋がりがある友達とも会えなかったし。

 もう嫌になっちゃうな。わたしが道化でなかったらクソ暗いテンションを5日は引きずっていたと思う。

 

 

 20歳になったところで何がめでたいんだろう。

生まれたときがわたしのピークだったというのに。望まれて産まれて、きっとみんながわたしの出生を喜んでくれた。あのとき狂うほど泣き喚いたのは、もうこれ以上無条件に幸せになれる瞬間はないと知っていたからだ。

 

 自分がそれなりに文章が書ける人間でよかった。

そうでなかったら、このどうしようもなく暗く沈んだ気持ちに溺れてそのまま戻ってこなかったかもしれない。

 

 

 

 

 わたし以外の人の成人式は、どうか華やかで幸せなものでありますように。