創作ボイスドラマ台本(5人用) 『Wolf!』

【あらすじ】
ある村で村長が無惨に喰い殺された遺体が発見された。しかもそこは人の姿をした狼が紛れ込んでいるという噂のある村だった──!?
犯人は村長の親族の姉妹か、第一発見者である騎士か、はたまたおいしいパン屋さんか──。
話し合いから人喰い狼を導き出せ!


*****


   SE 狼の鳴き声


高橋「落ち着いて聞いてください」
うつみ「何があったんですか?」
さやか「みんなを集めるぐらいなんだから相当なんだよね?」
高橋「…村長が、殺されていました。あの傷は喰い殺されたんだと…」
うつみ「うそ!?」
つきな「村長が!?」
さやか「村長って…村の偉い人ってこと!?」
うつみ「そうだよ、村長だからね」
つきな「ちなみにズルムケのハゲだよ」
高橋「そうです、そのズルムケのハゲが殺されていたんです」
さやか「大変じゃん…」
高橋「そうです、大変なんです」
うつみ「というか、喰い殺されたって言ってませんでした?」
高橋「はい」
うつみ「じゃあ、この村に人の姿をした狼がいるって噂は本当だったんだ…。誰がそんなことを?」
高橋「それがわからないからこうして皆さんに集まってもらってるんです」
つきな「じゃあ早くその犯人を捜して炙り出さないといけないってことね」
さやか「でも、犯人って動機がある人ってことだよね?それならうつみ姉じゃない?」
うつみ「え?」
さやか「ほら、なんかこの前言い争ってなかった?ズルムケさんと」
うつみ「いや、そんなこと…」
さやか「確か『お前の占いはインチキだ』って言われて、水晶割られてたでしょ」
うつみ「それは…!」
さやか「お仕事占い師だったよね?だったらそんなこと言われちゃ商売できないし、それでやっちゃったとか」
うつみ「いや、それは確かに言われたけど、だからって殺すとか…!」
つきな「叔父さんに占い師の命の水晶を割られて、カッとなって喰い殺した…って感じ?」
うつみ「違う!だったら言わせてもらうけど、つきなだってこの前叔父さんに怒鳴られてたよね?」
つきな「…ああ…」
うつみ「聞いた噂だけど、叔父さんが昔コンテストでもらった金メダルにかじりついたとか」
さやか「え、ほんと?おいしかった?」
つきな「…それはさすがに噂に尾ヒレがつきすぎ」
うつみ「じゃあ本当は何があったの?」
つきな「...かじりついてはない。ただ不注意で落として、欠けさせちゃっただけ」
うつみ「叔父さん、あれすごい自慢してたよね?そんなもの壊したってなったら謝るだけじゃ済まないでしょ。ひどいこと言われたんじゃないの?」
つきな「確かに言われたけど、私は殺してない。でもお姉ちゃんは水晶まで壊されたんでしょ?なら殺したくもなるよね」
うつみ「ちょっと何でそうなるのよ…!さやかもなんか言ってやってよ」
さやか「とか言って、商売道具壊されたんなら絶対恨んではいるでしょ。インチキなんて言われちゃったら、もうこの村では占いができないもんね」
山本「こんにちは~」
うつみ「さやかまでそんな言うの!?じゃあさやかはどうなのよ!?」
さやか「ハゲに興味ない」
うつみ「今ハゲ関係ない!」
さやか「そもそもあの人とそんな会ったことないし。動機ないよ、うつみ姉と違って」
うつみ「私も殺そうなんて思ってないって!」
山本「こんにちは…」
つきな「どうだか。呪い殺して喰っちゃったんじゃないの?占い師らしくさあ」
うつみ「うるさい!あんただって昔から力だけはあるんだから馬鹿力で殺したんじゃないの!?」
つきな「はあ!?力以外もあるし!」
うつみ「たとえば?」
つきな「猫と仲よし!!」
山本「こんにちはァ!!パンが焼けましたよォ!!」
高橋「あ、パン屋さん。こんにちは」
山本「こんにちは。どうしたんですか?こんなに殺伐として…。何かあったんですか?」
高橋「それが、村長が狼に喰い殺されてしまったんです。それで今犯人捜しをしてるんですよ」
山本「村長が…それは大変だ。それで、犯人は見つかったんですか?」
高橋「いえ、喧嘩になってしまいました…。それぞれ動機があるそうです」
山本「なるほど…それは時間がかかりそうですね。パンでも食べて、今日はもう寝ましょう。争ってもいいことはないですよ。平和にいきましょう。今日は私の自信作、ピーナッツバターパンですよ」
うつみ「ピーナッツ…?」
さやか「あ。わたしがリクエストしたやつだ」
高橋「…そうですね、一旦頭を冷やしたほうがいい。この続きはまた明日にしましょう」


   SE 狼の鳴き声、騎士が戦う音


山本「あ、皆さん早いですね。昨日はよく眠れましたか?」
うつみ「全然!もう意味わかんない、高橋くんが私の家に来たんだもん!のんきに寝られるわけないでしょ!」
高橋「どうしてそんなこと言うんですか!俺は守りに行ったのに!」
うつみ「物音で目が覚めたからよかったけど、あのとき私が起きなかったら変なことするつもりだったんでしょ!」
高橋「そんな、俺はただ守ろうと…!その物音だってきっと人狼と戦ったときのものです!俺は昨日確かに人狼を見たんです!」
うつみ「ウソ!そもそも、私の許可なく家の中にいたし!」
つきな「えっどうやって家の中に…?」
さやか「え、え、うつみ姉が起きる前は何してたの?」
高橋「…それは…」
つきな「人に言えないようなことしてたんだ…」
さやか「う〜わ…」
山本「…高橋くん、ちゃんと素直に言わないと疑われたままになってしまいますよ? いいんですか?」
高橋「……夜通し守るから夜食にと思って…うつみさんの靴下の糸を一本一本丁寧にほどいて麺にして、『うつみラーメン〜髪の毛を添えて〜』を作ろうと思ってました」
山本「は?」
つきな「『うつみラーメン』…?」
うつみ「サイッテー!!」
さやか「キショ……」
高橋「でも、ほどいてる途中で人狼が来たから未遂です!」
うつみ「やろうとしてたことが気持ち悪いの!」
高橋「でも俺は本当に人狼と戦ってうつみさんを守ったんです!信じてください!」
うつみ「ド変態野郎の言うことなんて誰が信じると思うんですか!」
山本「まあまあうつみさん、落ち着いて」
うつみ「いや!話しかけないで!」
山本「え?」
うつみ「あなたも私を殺そうとしたでしょ!」
山本「え…ちょっと待ってください、どういうことですか?」
うつみ「だって昨日のパンはピーナッツバターパンだった!」
さやか「どうしてピーナッツバターパンだとパン屋さんがうつみ姉を殺そうとしたことになるの?」
うつみ「私はピーナッツがアレルギーなの!あなたそれを知ってるでしょ!?」
山本「いやあれは…」
高橋「山本ォ!」
うつみ「あんたは黙ってて!」
高橋「はい!」
うつみ「とにかく…私を殺す気じゃなかったらあんなゲテモノ寄越さない!この人殺し!」
山本「『ゲテモノ』…?」
つきな「…山本さん?」
山本「お前も俺のパンをバカにすんのかよ…」
うつみ「は?」
山本「アレルギーなんか知るかよ。俺は世界一のパンを作ってんだ、俺のパンはもはや芸術品!素人がバカにしていい代物じゃねえんだよ!『まずい』?お前らの舌がおかしいんだ、狂ってんのは俺じゃない…パン屋のクの字も知らない奴が文句をつけるな」
高橋「パン屋にクの字入ってねえよ…」
つきな「…その言い方だと、他にも山本さんのプライドを傷つけた人がいるんですか?」
山本「あいつだよ、あのハゲ!俺のパンをまずいと言った挙句に『店を潰す』とまで言いやがった!村長だからって権力を振りかざして俺の店を…許せない…。あんな奴、死んでよかったんだ」
つきな「じゃあ山本さんが村長を?」
山本「俺はやってない。ありがたいことに、殺しに行ったら狼の奴が先に殺してくれたからな」
さやか「え〜ほんとかなあ…あっそうだ、うつみ姉って昨日占いはしたの?」
うつみ「あ…うん。パン屋さんを占った」
さやか「ふーん。結果は?」
うつみ「水晶が割れててぼんやりとだったけど…白だった。でも絶対に黒!間違いないから!」
つきな「どういうこと…?」
さやか「えー…じゃあ追放するとしたら誰にする?今のところ高橋くんかパン屋さんが候補かな」
山本「別に俺を追放しても構わないが、食いっぱぐれるのはアンタ達だぞ」
さやか「ああ…それは困っちゃうね。じゃあ高橋くんでいい?」
高橋「ちょっと待ってくれよ!」
つきな「私もそれで賛成。隣の村で靴下ラーメンでも作ってたらいいんじゃないですか?」
高橋「…うつみさん…」
うつみ「…いいと思う。こんな変態、早くいなくなってほしい」
さやか「決定だね。それじゃあ高橋くん、さようなら。ラーメン屋さん、繁盛するといいね」
高橋「(アドリブ)」


   SE 狼の鳴き声


うつみ「おはようございます」
つきな「おはよう」
うつみ「え…これで全員?」
さやか「うん。メンズが全滅しちゃった」
うつみ「じゃあ、昨日はパン屋さんが…」
つきな「みたいだね。どうやらあの人を追放しなくても私たちは食いっぱぐれる運命だったみたい」
うつみ「じゃあ…つきな、あんたが人狼なんだね?」
つきな「…どうして?私からしたらお姉ちゃんも人狼の候補だよ」
うつみ「私は私が人狼じゃないことを知ってる」
つきな「うーん…それは理に適わない論理だね」
うつみ「私の占いの結果も人狼はあんただって言ってんの」
つきな「へえ…じゃあ昨日は私を占ったんだ?」
うつみ「ううん、さやかを占った。でも白だった」
つきな「それで消去法で私か…なるほどね」
うつみ「ちゃんと言って。叔父さんを殺して、パン屋さんまで殺したのはあんたなんでしょ?」
つきな「…だったら何?」
うつみ「え?」
つきな「私が白状して、お姉ちゃんにできることって何?騎士もいないのにどうやって私から逃げるの?」
うつみ「それは…あっ、さやか!さやかがいる。さやかとふたりで協力して、あんたを殺す」
つきな「『さやかと協力』…できるの?」
うつみ「…どういうこと?」
つきな「最初の日のこと覚えてる?パン屋さんが、お姉ちゃんが食べれないピーナッツバターのパンを持ってきたときのこと」
うつみ「…それ今関係ある?」
つきな「あのときさやかはそのパンを見て、『わたしがリクエストしたものだ』って言ってた」
うつみ「…あっ…」
つきた「だからさやかはこっち側の人間だってわかった。さやか、そうなんだよね?」
さやか「うん。わたし、つきな姉が人狼だってずっと前から知ってたから。あの人たちだけで揉めるように仕組んじゃえば、つきな姉に矛先が向くことはないかなと思って」
つきな「叔父さんを殺したあと誰かが来る気配がしたから心配だったんだけど…あれは山本さんだったんだね。自分で教えてくれてよかった」
さやか「上手くいってよかったね」
つきな「そうだね。あとはお姉ちゃんを殺しちゃえば全部終わる」
うつみ「ちょっ…ちょっと待って!私誰にも言わないから!私たち姉妹でしょ!?」
つきな「別にそれを信じてもいいけど…うっかり言わない保証もないよね。お姉ちゃんが死んじゃえばそんな心配をすることもなくなる」
さやか「高橋くんには少し悪いけど…しょうがないもんね」
つきな「じゃあね。お姉ちゃん」

 

   全員ハケ
   SE オオカミの鳴き声

 


役名/役職

瀬戸うつみ(姉)/占い師
瀬戸つきな(妹)/人狼
小田さやか(いとこ)/狂信者
高橋いつき/騎士
山本あきら/パン屋